松本滞在記二〇一六

2016年5月22日 - text / WORKS

松本滞在生活11日目 (5/8)

昼に松本着。同時に現在民藝館2016最終日。今年はいつもの空気感を味わうというよりも、会場を変えたことで新鮮な感じだった。初めて駅前に会期中いたことでまじまじと現実を感じてしまった。

今までの展示していた、池上邸は駅から美術館、あがたの森へ繋がる導線上にありつつ周辺は観光客があまりこない閑静な住宅街の中に佇んでいる築80年以上の古い土蔵だった。いい感じの建物が残っていたり、綺麗な小川が流れていて、時々琴の音が聞こえてくる。環境で言えば直島の家プロジェクトの集落のような感じで、来場者が自然と感覚をフィルターにかけてくる、そんな場所だった。

今年は閉店した旧・民芸店を借りれることになったのでこちらを会場にしたのだが、駅前の一等地に建つお店が本当に閉店するのか、という現実に最初は戸惑った。実際駅前のロータリーは人がたくさん移動していて、目の前は観光バスが停まる場所なのに。

でも会期中にこの場所で過ごしてみて少しわかった気がした。

GW中は人もたくさん訪れるので、街頭演説が毎日のように行われていた。ストリートライブはほとんどがコピーバンドだった。おそらく、駅から降りてきた人は「松本に来たな~。」という感覚よりも先に、求めていなかった出来事を見なかった、聞こえなかったことにするだろう。きっと松本に着いた感を感じるのは、チェーン店が立ち並ぶ駅前を抜けてお城の通りに出た後だ。

今年は、本当に編集無しのリアルな松本を経験した。

夜はまさかのコンフィチュール屋の蒔田くんのバーがオープン。年に数回と聞いていたものがすでに2回目。現実の松本の話しを社長達とする。今年の夜は、いつもにも増して飲んでいたけど、松本で活動している若い人達と話しができるのは刺激的だった。

僕たちは今年の経験を来年のプロジェクトにどう活かせるかを考えてみたい。

深夜ホテルに戻ると、フロントの人が全く出てこなかった。5分くらいは呼び鈴をならし続け、「すみませーん」と叫んだだろうか。仕方ないので奥にある事務所に入るとおじさんがヘッドフォンをつけながら爆睡していた。寝るのはまだいいとしてヘッドフォンは業務放棄だろと思いつつ、体を揺すって起こしたら、おじさんは両手で顔を覆いながら、ロビーまで響く聞いたことない叫び声を発しながら起き上がった。たぶんお化けか幽霊的なものが出たと思ったのだろう。

寝ぼけたおじさんが受付してくれて今日も終わる。

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