何かを配置するための情況と環境 第一章:休息の場面

2015年9月30日 - project / WORKS

/ residence program /名古屋


9月末、名古屋、港街。数日だけの滞在は、小さな倉庫を僕たちのアトリエにするところから始まった。


第一章 休息の場面
episode 1 scene of rest

日曜日
約60人の朝食が終わり一段落した後、皆で昼食に。何回か訪れたことのある近所のうどん屋さんへ。ここは出てくるまでに大分時間を要するのだが、打ち立て、切り立て、湯でたての面はモチモチとしていてうまい。隣の席ではおそらく近所のおじさん達が昼からビールとつまみで一杯やっていた。古本を見に久しぶりに都会へ出る。この日は日曜日ということもあり、こちらの街は若い人で賑わっていた。

月曜日
Nさんの倉庫を借りることができた。少しの間だが、この街にアトリエを構えることができる。
近くのホームセンターで材料を購入し、まずは、壁をつくることにした。壁面に滞在中のメモや手に入れたオブジェなどを飾って行く予定だ。昼食は向かいにある韓国料理屋でビビンバを食べる。この街のご飯屋さんはどこも美味しい。シャッターを開けていると通りすがりの人が覗いて行く。アトリエではコーヒーを淹れているので来た人とコーヒーを飲みながら話しをする。話と言っても世間話だが。夕方作業が一段落したので、昨日たまたま知り合った角打もやっているという酒屋さんへ。当たり前だけど一見さんは入れる雰囲気でもない。が、勇気を出して入ることに。常連のお客さんの中には僕たちのことを覚えていてくれた人もいて案外ウェルカムな空気の中、ハイボールと味噌おでんを注文する。なかなか出会わないであろう地元の方と普通の話をする。僕たちの席は一番端。常連になるほどレジの横に近づけると教えてくれた。この日はスーパームーン、駐車場の横、ちょうど東側が開けている交差店で。

火曜日
昨晩、角打の後ポットラックビルでMさん主催の勉強会で飲んだため中々起きれず遅れてアトリエに向かった。寝起きの体に快晴の空気が痛い。
滞在している家からアトリエまでは自転車で五分くらいの距離で、運河沿いの道を走る。観覧車と水族館の建物が見える。横浜のみなとみらいほど賑やかではないが、少し気分が上がる。のも束の間で、手前のラブホテルで少しばかりがっかりするが、水族館からホテルが定番コースなのだろう。
アトリエにつくとY夫妻がやって来た。奥さんは打ち合せのため事務所に行き、今日は休みだという旦那さんとコーヒーを飲みながら先日まで大分県でやっていたプロジェクトについてなどを話す。思えばこの二人とは長い付き合いだ。
昼前に街のリサーチへ。赤線の跡がまだあるかもしれないと近所の方が教えてくれたので、広い道を渡る。綺麗なマンションが並ぶ付近を歩きながら、大きなお寺を見つけた。元々赤線は大きな寺を中心に出来ることが多かったことを知っていたし、変な立地に建つ交番が赤線エリアを教えてくれているのだがそられしき建物は中々見つけられない。仕方ないのでiphoneで検索して情報を得ることに。どうやら探していた赤線は廃れてしまったようで、本来ならばiphone片手に座っている道には商店街のアーケードがかかっていた。一軒だけ残っているかもしれない建物を見つけ見にいくことに。当時の建物そのままに今はアパートになっていた。僕たちが以前借りていたスペース「竜宮美術旅館」に似た建物だが、正直感動はあまりなかった。道が広く開発されているのと、まわりの住宅があまりにも綺麗過ぎたのだ。遅めの昼はアトリエの近くにあるラーメン屋でラーメン、チャーハンセット。このセットは裏切らない。

商店街を歩いていて出会った女性が家に招き入れてくれた。奥に京都の長屋のような家。太鼓を叩いてくれた。

水曜日
23号線の歩道橋を渡り、お寺と交番の間の道を歩くと一軒の古い建物が見える。僕たちが以前横浜で借りていた旅館と佇まいが似ている。赤いタイル張りの壁と、純日本家屋風の屋根のチグハグさが“いかにも”な感じだ。この辺りはいわゆる赤線エリアだったというが、今やその面影はなく、綺麗なマンションや住宅が立ち並んでいる。

突き当たりの、いい感じに寂れた倉庫の前に、これまたいい感じのグラウンドと、ベンチ。その脇を進むと、工場地帯に辿り着いた。何がつくられているのかピンと来ないが煙突から煙が上がり道路脇にはトラックが並んでいる。時折フロントガラスに掛けた遮光シートから脚が見える。ここは海と川が交わるところ。西にひたすら真っすぐ伸びた道を歩いて今日はアトリエに帰る。

木曜日
雨。昨日貰った団子のお礼に開店の準備をするおじさんに珈琲を差しいれる。

金曜日
アトリエのシャッターを開けたら、いせやのお母さんが立ち寄ってくれた。本当はもっと早く来たのだが、シャッターが閉まっていたので隣のフルーツ屋さんで待っていてくれたらしい。たまたま通りかかったパン屋さんも寄ってくれた。
神社がある場所は、見せ物小屋が建っていて、その後は映画館になった。コーヒーの代わりにみかんを置いていってくれた。
甘い大吟醸、4畳半といい男、大トロの刺身があればいいと話をしてくれた。(羽生すぐる、遠藤か、喫茶店の関谷君)


何かを配置するための情況と環境
The context and environment in which something is set.

› tags: project /